5期生 上田 雄さん『文科系のための暦読本』(増補・改訂版)を出版 あしかび会にご寄贈(2016年3月)

芦高の日本史の先生を務められた上田雄さん(芦高5期生・日本暦学会理事・母校在任:1965年4月―1981年3月)が、このほど『文科系のための暦読本』(増補・改訂版)を言視舎より出版され、あしかび会にご寄贈いただきました。

暦の本格的な研究には天文学と高等数学の知識が必要ですが、本書は高等数学を使わずに古今東西の暦の「謎」「不思議」を解説し、数学が苦手な文科系の人でも暦のルールを知り、暦に親しめるように書かれています。(画面をクリックすると拡大されて文字が読めます。)

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著者の上田さんは、本書執筆の動機として次の三つの「大義名分」をあげられています。

その1: 月日、年月の経過を測る物差しとして、私たちが毎日使い、お世話になっている暦について、大方の人たちが漠然とした知識しか持ち合わせていないこと。

その2: 旧暦の知識が必要な歴史分野や国語(古文)に携わる研究者、学校の先生方、学生が現行暦と旧暦との差異についての正確な知識を全く持ち合わせていないこと。

その3: 最近、かっての高度成長期への反省もあってか、レトロブームがおこり、昔のものが見直されることが多いが、その風潮に乗って暦の世界でも、現行暦よりも陰暦(旧暦)のほうが「人間本来のリズムに適合している」、「日本人の季節感をよく表している」、「スローライフにピッタリである」というように陰暦を礼賛する言説がまかり通り、本が書かれ、それをマスコミが持ち上げるという現象が顕著である。
陰暦(旧暦)は確かによくできた暦ではあるが、それを過大評価して、現行暦よりも優れたものである、という言説、傾向は決して科学的なものではない。
陰暦(旧暦)が現在では通用しないものであることは、本書を読んでいただければ分かることであるが、なぜか妄説のみがもてはやされ、その誤りを指摘する声も上がらず、それを正す本も出ていない。
このように非科学的な現状を危惧するからこそ、非力ながら正確な暦の知識を広めたいというのが、筆者ならびに監修者の心意気なのである。

上田さんからこれまで、あしかび会に次の著書をご寄贈いただいています。
・日本渤海交渉史(改訂増補版)(1994年 彩流社)
・渤海使の研究-日本海を渡った使節たちの軌跡(2002年 明石書店)
・渤海国―東アジア古代王国の使者たち(講談社学術文庫)(2004年 講談社)
・遣唐使全航海(2006年 草思社)

上田雄さんは2016年6月6日病気のため逝去されました。
御冥福をお祈りいたします。

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